第2事件 / 2026年11月

閉店写真館
の二枚目

封をした展示ケースの中にある写真が、家族の控えと少しだけ違う。閉店した写真館に残る二枚の写真から、消えた十二枚と撮影者の名前を追う。

11月1日—30日 全30話 約2〜3分
2026 / 11記録 01 / 30

記録 01

落ちた梨の行方

ここまでの事件

閉店した写真館の寄贈展が始まる。まだ、誰も写真の違いに気づいていない。

展示ケースの前で、女性が自分の鞄を開けた。

「うちのは、これなんです」

差し出された小さな白黒写真には、店先に立つ四人家族が写っていた。右端の女の子が梨を持ち、足元にもう一つ梨が落ちている。ケースの大きな写真では、足元に梨がない。

花瀬町の小さな展示室で資料整理を担当する荻野澄は、二枚を交互に見た。大きく引き伸ばしたとき、端を切ったのだろうか。けれど、地面は同じ範囲まで写っている。

女性は吉岡千景と名乗った。写真の右端にいる八歳の女の子が、いま三十六歳になった彼女だった。

「落として、怒られたのを覚えてます。だから、この写真が好きで」

展示は『花瀬の午後』。亡くなった写真家、三枝康雄の十二枚の連作だ。閉店した灯庭写真館から寄贈され、今日から公開されている。

澄は十月二十八日の受入記録を開いた。康雄の息子、三枝修平と一緒に、ケースの扉へ確認紙を貼った。紙は破れていない。展示室には夜間の入室記録もなかった。

「大きい方は、あとから直したんでしょうか」

千景の問いに、澄はすぐ答えられなかった。写真の中の女の子は、梨だけでなく、左手の位置も少し違っていた。

今日判明したこと

  • 同じ家族の二枚の写真で、梨と手の位置が違う。
  • ケースの封は十月二十八日から破れていない。
  • 展示の十二枚は三枝康雄の作品として寄贈された。

読者推理

二枚の違いは、何によるものだと思いますか。

投票結果によって本編の結末は変わりません。