第2事件 / 2026年11月

閉店写真館
の二枚目

封をした展示ケースの中にある写真が、家族の控えと少しだけ違う。閉店した写真館に残る二枚の写真から、消えた十二枚と撮影者の名前を追う。

11月1日—30日 全30話 約2〜3分
2026 / 11記録 02 / 30

記録 02

封をした日の写真

ここまでの事件

家族の控えと展示写真で、梨と手の位置が違う。展示ケースの封は破れていなかった。

澄は受入日に撮った写真を、画面いっぱいに広げた。

十月二十八日午後四時。展示ケースに十二枚が並び、修平が確認紙へ署名している。七枚目の家族写真には、すでに落ちた梨がなかった。

「展示中に変わったわけじゃないですね」

照明の調整に来た立花圭が言った。額装をした職人でもある。ケースには裏から写真を抜ける隙間はなく、壁との間にも人が入る場所はない。

澄は記録の余白に、『封をする前から違う』と書いた。封が無事だという事実は、写真が正しいという証明にはならない。

寄贈契約は十月二十日に結ばれていた。対象は康雄が一九九八年に仕上げた十二枚の原作。所有権は契約日に展示室へ移り、二十八日の搬入までは写真館で預かる取り決めだった。

修平は電話で、『父が同じ写真を何枚も焼いたのでしょう』と言った。焼くとは、ネガに光を通して印画紙へ像を写すことだ。

同じネガから何枚焼いても、人の手は動かない。立花はそこだけ、静かに言い直した。

澄は展示説明の『原作』という文字に小さな付箋を貼った。まず確かめるべきなのは、誰がケースを開けたかではない。何を、いつ、そこへ入れたかだった。

今日判明したこと

  • 展示写真は封をした日から現在と同じだった。
  • 契約対象は一九九八年に仕上げた十二枚の原作だった。
  • 同じネガからの焼き増しでは、人の姿勢は変わらない。

読者推理

最初に確認すべき記録はどれでしょう。

投票結果によって本編の結末は変わりません。