第1事件 / 2026年10月

10月31日の
予測

停止したはずのシステムが、まだ起きていない事故を知らせた。31日間で記録をたどる、現実にありそうな技術ミステリー。

10月1日—31日 全31話 約3〜5分
OCTOBER 2026記録 01 / 31

記録 01

廃止システムからの警告

ここまでの事件

まだ、事件は起きていない。

水瀬佐和がそのメールを開いたのは、出勤して最初のコーヒーを一口飲んだ直後だった。

朝凪市役所の六階。始業まで四十分以上あり、執務室には空調の音しかない。件名は短かった。

【FLOW-7 自動警告】重大混雑事象の発生予測

FLOW-7は、駅や道路の人の流れから混雑を予測する実証システムだ。佐和も立ち上げから終了まで関わった。そして一年前、市はシステムを停止したと発表している。

メールには、10月31日18時42分、朝凪中央駅の自由通路で転倒事故が起き、43名が負傷すると書かれていた。回避できる可能性は12.4%。根拠となる記録は、明日から一件ずつ復元されるという。

送信元は、すでに削除されたはずの市のアドレスだった。削除の完了報告書に確認印を押したのは、佐和自身だ。

四十三名という数字に覚えはない。だが18時42分には覚えがあった。一年前、FLOW-7が最後の異常警報を出した時刻と同じだった。

当時の記録には『センサーの誤り』とある。負傷者はいなかった。そう報告されていた。

佐和が庁内電話を取った瞬間、メールの末尾に新しい一行が現れた。

RECOVERY FILE 02 — LOCKED UNTIL 2026-10-02 04:12

今日判明したこと

  • 一年前に停止したはずのFLOW-7から警告が届いた。
  • 10月31日18時42分、駅で43名が負傷すると予測している。
  • 警告の根拠記録は、明日から一日一件ずつ復元される。

読者推理

この警告を送ったのは誰だと思いますか。

投票結果によって本編の結末は変わりません。