記録 01
廃止システムからの警告
まだ、事件は起きていない。
水瀬佐和がそのメールを開いたのは、出勤して最初のコーヒーを一口飲んだ直後だった。
朝凪市役所の六階。始業まで四十分以上あり、執務室には空調の音しかない。件名は短かった。
FLOW-7は、駅や道路の人の流れから混雑を予測する実証システムだ。佐和も立ち上げから終了まで関わった。そして一年前、市はシステムを停止したと発表している。
メールには、10月31日18時42分、朝凪中央駅の自由通路で転倒事故が起き、43名が負傷すると書かれていた。回避できる可能性は12.4%。根拠となる記録は、明日から一件ずつ復元されるという。
送信元は、すでに削除されたはずの市のアドレスだった。削除の完了報告書に確認印を押したのは、佐和自身だ。
四十三名という数字に覚えはない。だが18時42分には覚えがあった。一年前、FLOW-7が最後の異常警報を出した時刻と同じだった。
当時の記録には『センサーの誤り』とある。負傷者はいなかった。そう報告されていた。
佐和が庁内電話を取った瞬間、メールの末尾に新しい一行が現れた。
RECOVERY FILE 02 — LOCKED UNTIL 2026-10-02 04:12
今日判明したこと
- 一年前に停止したはずのFLOW-7から警告が届いた。
- 10月31日18時42分、駅で43名が負傷すると予測している。
- 警告の根拠記録は、明日から一日一件ずつ復元される。
読者推理
この警告を送ったのは誰だと思いますか。
投票結果によって本編の結末は変わりません。