記録 05
食い違う終了理由
FLOW-7は予測結果を駅や市アプリへ渡していた可能性がある。しかし、その機能は市民向け資料から削除されていた。
実証実験の終了理由は、資料によって三つあった。
市民向け発表は「所定の検証期間を終えたため」。議会提出資料は「予測精度が目標値に届かなかったため」。受託会社の事業報告は「運用体制の見直しにより終了」。
秋山が情報公開請求で得ていた会議録には、別の表現があった。
外部連携時の挙動について、再現性の確認が終わっていない。
その直後の三行は黒く塗られていた。参加者一覧には、水瀬佐和、榊原征一、北辰データシステムズの野々村遼。佐和も出席した会議のはずだった。
「覚えていないんですか」
秋山に聞かれ、佐和は議事録の日付を見直した。
会議は前年十一月六日、午後8時30分開始。佐和はその日、別室で廃止発表の想定問答を作っていた。出席者欄には名前があるが、会議に入った記憶はない。
庁内に残る別版の議事録を探すと、開始時刻が午後6時に変わり、「外部連携時の挙動」という一文自体が消えていた。作成者は同じ。文書番号も同じ。
一つの会議に、内容の違う二つの確定版がある。
そして復元ファイルには、黒塗り前の文章が一行だけ残っていた。
案内出力の競合により、群衆集中を誘発した可能性。
今日判明したこと
- 実証実験の終了理由は、公表先ごとに食い違っていた。
- 同じ文書番号の議事録が二種類存在する。
- 内部では、案内出力が群衆集中を誘発した可能性が指摘されていた。
読者推理
二つの議事録を作らせた人物は誰だと思いますか。
投票結果によって本編の結末は変わりません。