記録 16
一年前の群衆
FLOW-7は予測するだけでなく、案内によって予測した状況を作り出す危険を持っていた。野々村の証言には未公開の後半がある。
復元された映像には、一年前の朝凪中央駅が映っていた。
実証実験最終日。現在と同じ午後6時42分。東西自由通路の入口で、三方向から来た人の列がぶつかっている。
東口の案内板は「西口混雑・東西通路へ」。市アプリも東西通路を推奨。駅前バスの案内係は、端末に表示された指示を見て団体客を同じ方向へ送っていた。
一つひとつの案内には理由がある。東口のセンサーは西口の混雑を見ていた。アプリは最短時間を選んだ。バス端末は乗り場変更に従った。
全体では、すべてが同じ狭い入口を指していた。
映像の三分二十秒、列の中央で一人が転んだ。周囲が止まり、後ろから来た人が押し寄せる。駅員が案内板の電源を切るまで、さらに四十秒かかった。
市の公開報告では、この時間帯の記述は「一時的な滞留を確認」の一文だけだった。
映像の末尾で、撮影者らしい声が入っている。
「救護室、三名。うち一名は病院へ」
今日判明したこと
- 一年前にも、複数の案内が東西自由通路へ人を集中させていた。
- 通路内で転倒が起き、少なくとも三名が救護された。
- 公開報告は事故を「一時的な滞留」と表現していた。
読者推理
事故を小さく記録した主な理由は?
投票結果によって本編の結末は変わりません。