記録 19
単独で動く古い端末
主サーバーは止められたが、市や駅が管理する末端設備は停止作業の対象外だった。榊原は、その条件を見落としていた。
駅の壁を開ける許可が下りた。
保守区画に残っていた端末は、靴箱ほどの灰色の機械だった。製造年は十一年前。前面の表示には現在時刻と、F7-GUIDEの文字がある。
久我は端末へ操作を加えず、型番と配線だけを記録した。メーカーの保守資料によれば、一定期間の案内ルールを内部に保存し、中央との通信が切れても最後に受け取った設定で動作を継続する仕様だった。
「災害時に通信が切れても案内を続けるためです」
久我が言った。
安全のための機能が、廃止後も動き続ける理由になっていた。
端末の時計は七分進んでいた。駅の新システム、アプリ、バス案内はそれぞれ別の時計で動いている。FLOW-7が全体を調整していた頃は差を吸収できたが、中央を止めた後は、古いルールが別々の時刻に実行される。
端末の表示履歴には、十月三十一日の予約があった。
18:35 EAST-WEST GUIDE — LOCAL EXECUTION
中央から新しい命令を受けたのではない。端末自身に残っていた予約だった。
今日判明したこと
- 駅の旧端末は、最後に受け取った案内ルールを内部保存していた。
- 中央サーバーがなくても、予約を単独実行できる。
- 端末ごとの時計のずれが、複数案内の衝突を悪化させる可能性がある。
読者推理
この端末を残した最大の原因は?
投票結果によって本編の結末は変わりません。