第1事件 / 2026年10月

10月31日の
予測

停止したはずのシステムが、まだ起きていない事故を知らせた。31日間で記録をたどる、現実にありそうな技術ミステリー。

10月1日—31日 全31話 約3〜5分
OCTOBER 2026記録 17 / 31

記録 17

伏せられた軽傷者

ここまでの事件

一年前、FLOW-7の案内が人を集中させ、転倒者が出ていた。しかし市の公開報告には事故として記載されていなかった。

非公開の事故報告草案には、負傷者の内訳が残っていた。

救護室で処置二名。市内病院へ搬送一名。診断は手首の捻挫。いずれも軽傷。報告者は駅側の久我で、原因欄には「複数媒体の経路案内が同時に切り替わったため」とある。

久我は草案を見て、しばらく黙っていた。

「正式版では、負傷者なしになっていました。搬送された方が自力で帰宅したので、事故扱いにしないと説明された」

草案の修正履歴には、榊原の部署から届いたコメントが残る。

因果関係未確定。実証実験との関連を削除。

北辰データシステムズからは別のコメントがあった。

案内は各サービス側の判断であり、FLOW-7の直接制御ではない。

市も会社も、個別の設備を直接動かしたのは自分たちではないと言った。その結果、全体の動きを作った責任者は存在しなくなった。

秋山は草案を記事にできると言った。佐和は止めた。今公表すれば駅に問い合わせが殺到し、十月三十一日の対策より先に責任論だけが走る。

「いつまで待つんですか」と秋山は聞いた。

佐和は答えられなかった。

今日判明したこと

  • 一年前の実証中、実際に三名が負傷していた。
  • 市と受託会社は因果関係を互いの管轄へ押し返した。
  • 正式報告では負傷者とFLOW-7の関連が削除された。

読者推理

秋山は草案を今すぐ報道すべきでしょうか。

投票結果によって本編の結末は変わりません。