記録 31
午後六時四十二分
FLOW-7は予言していたのではない。街に残った自動案内が、予測した混雑を自ら作ろうとしていた。対策で負傷者予測は51名から7名まで減ったが、最後の一系統だけが止まっていない。
朝凪中央駅には、月末の夕方とは思えないほど広い通り道ができていた。イベントは早く終わり、臨時列車のホームも変更された。人は多い。それでも流れは止まっていない。
午後6時17分。十三番目までの対策は、すべて実行されている。それでもFLOW-7の予測は、負傷者七名を消さなかった。
設備管理の久我が、古い構内図を持って駆けてきた。現在は壁になっている場所に『団体待合案内盤』とある。通常の案内板とは別の古い設備で、FLOW-7の廃止対象に入っていなかった。
壁の裏の保守区画に、灰色の金属箱があった。小さな画面は、午後6時35分に団体客を東西自由通路へ案内すると表示している。
担当者が影響を確認し、電源を切ったのは午後6時31分だった。同じ時刻、佐和の端末に最後の予測が届いた。
午後6時42分。人の列は駅員の声に従って二つに分かれた。立ち止まる人はいない。何も起きなかった。
事故は、事故として記録されることさえなく消えた。
市の発表に『AIの暴走』という言葉は使われなかった。システムに意思はない。ただ、停止したつもりの命令を、誰も最後まで止めていなかった。
佐和は廃止処理の報告書を開いた。今度は『誰かが確認したはず』で終わらせないために。
最終的に判明したこと
- 毎日の警告は、元技術者が残した内部告発用の安全装置だった。
- 原因はAIの意思ではなく、街に残った自動処理と不完全な廃止作業だった。
- 最後の旧案内端末を止め、18時42分の事故は回避された。
- 行政システムの廃止手順を見直す調査が始まった。
読者推理
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