記録 25
43名という数字
十月三十一日は、四つの予定と五つの案内が重なる。個別には正常な変更が、組み合わせによって事故条件を完成させていた。
最初の警告にあった43名は、未来の被害者を数えた数字ではなかった。
復元された「計算の根拠」には、一年前の実証実験で記録された人の密度、歩行速度、転倒発生位置が使われていた。公開報告から消された三名の負傷記録も、モデル上には残っている。
野々村は、その実測値を十月三十一日の条件へ当てはめていた。結果は43.6名。警告では小数点以下を切り捨て、43名としている。
資料には注釈があった。
本値は確定した未来ではない。前年と同じ誘導が再現された場合に、救護を要する人数の中央値を示す。
さらに、最悪条件では89名。最良条件では11名。43名は最低被害でも最大被害でもなく、最も起こりやすい範囲の中心だった。
「数字が具体的すぎるから、予言に見えた」
秋山が言った。
佐和は首を振った。
「具体的にしないと、誰も動かなかったのかもしれない」
実際、「重大な混雑のおそれ」とだけ書かれていたなら、佐和も最初のメールを保留箱へ入れていた可能性がある。
今日判明したこと
- 43名は、一年前の非公開事故データを使った統計的な中央値だった。
- 確定した未来ではなく、同じ条件が再現された場合の推定値だった。
- 具体的な人数は、関係者を動かすための警告表現でもあった。
読者推理
具体的な「43名」という表示をどう思いますか。
投票結果によって本編の結末は変わりません。