記録 24
事故条件が揃う日
警告はAIの意思ではなく、野々村が残した内部告発用の仕掛けだった。危険条件が再び揃ったため、一年前の証拠が開示されている。
月末イベント計画書の最終版が提出された。
駅前広場の来場予測は一万二千人。午後6時20分にステージが終わり、約三千人が駅へ向かう。臨時列車からは九百人が降りる。団体バス六台は、西口工事のため乗り場を南側へ移す。
工事区画の実測では、東西自由通路の有効幅は通常の六割。出口付近には資材を運ぶための仮設扉があり、人が立ち止まると流れが二つに割れる。
佐和たちは条件を一つずつ監視モデルへ入れた。イベントだけなら危険度は低い。列車だけでも、工事だけでも事故予測は出ない。四つの条件と五つの案内が重なったときだけ、転倒連鎖の基準を超えた。
「一つの大きな故障じゃないんですね」
秋山が言った。
「全部、よくある小さな変更です」
だから誰も止めなかった。催事担当は終了時刻を延ばし、鉄道会社は需要に合わせて列車を増やし、工事担当は工程どおり通路を狭めた。それぞれの判断は正しい。
全体を見なかったことだけが、間違っていた。
今日判明したこと
- 催事、臨時列車、団体バス、工事の四条件が十月三十一日に重なる。
- どれか一つだけでは事故予測は発生しない。
- 小さく正しい判断の組み合わせが、危険を作っていた。
読者推理
優先して変えるべき条件は?
投票結果によって本編の結末は変わりません。