第1事件 / 2026年10月

10月31日の
予測

停止したはずのシステムが、まだ起きていない事故を知らせた。31日間で記録をたどる、現実にありそうな技術ミステリー。

10月1日—31日 全31話 約3〜5分
OCTOBER 2026記録 04 / 31

記録 04

予測するだけのシステム

ここまでの事件

警告は市の非常時用バックアップから送信されていた。そこには公式資料にない監視処理が残り、記者の秋山にも匿名情報が届いていた。

秋山が持ってきたのは、FLOW-7の市民向けパンフレットだった。

青い矢印が街を巡り、中央には「混雑を先に知れば、街はもっと歩きやすくなる」と書かれている。機能説明は、人流の把握、三十分後の混雑予測、職員への注意表示。そのどこにも、案内板やアプリを操作するとは書かれていない。

「市の説明では、予測するだけでしたよね」

「私もそう理解していました」

佐和は答えた。だが最終ページの小さな図が気になった。FLOW-7から伸びた点線が「情報提供先」へつながり、その先に駅案内、市アプリ、バス運行の三つが描かれている。

「情報を渡すだけなら普通です」と佐和は言った。

秋山は、同じ時期の議会映像を再生した。推進室長だった榊原征一が答弁している。

混雑予測に基づき、関係サービスが最適な案内を自動的に選択します。

パンフレットにない「自動的に」という言葉だった。

さらに匿名の封筒には、パンフレットの校正履歴が入っていた。初稿にあった一文が、公開版では削除されている。

予測結果に応じ、各案内サービスへ推奨経路を配信します。

削除理由の欄には、六文字だけ記されていた。

誤解防止のため

何を誤解させたくなかったのか。佐和には、むしろ削除後の方が実態を誤解させる文章に見えた。

今日判明したこと

  • 市民向け説明では、FLOW-7は混雑を予測するだけとされていた。
  • 初稿には、外部サービスへ推奨経路を配信する機能が明記されていた。
  • 市は公開前に、その説明を削除していた。

読者推理

「誤解防止」という修正の本当の目的は?

投票結果によって本編の結末は変わりません。